口の中の健康を守ることで、全身の健康を守りたい
年を重ねても、元気で健康な生活が送れる秘訣(ひけつ)は、 口の中を健康に保つこと
「口の中が健康だと、全身の、また生活の質を上げることができるんです」と、にこやかに語るのは、大阪府枚方市で約30年間、歯科医師を務める村上歯科医院の村上卓先生。歯科医師を目指して大学で勉強をしていた頃から、“口の中の健康は全身の健康にかかわっており、口の中の健康を守ることで、全身の健康を守る”というポリシーを貫いています。
「“8020運動”をご存じですか?」。口の中の健康が、全身の健康にかかわることを不思議に感じていると、村上先生がそう問いかけてきました。“8020運動”は、80歳になっても20本以上の歯を保つことを目的に、日本歯科医師会と厚生省(現厚生労働省)が提唱した運動です。「80歳で20本以上の歯をお持ちのいわゆる歯の丈夫な方は、心身ともに元気な方が多いんです。見た目が80歳には見えないほどお若い!」
「食べることは、口の大きな機能ですよね。しっかりかんで、おいしいと味わって食べることは、なにげないことですが、かむこと、感じること、味わうことなどを瞬時に行う作業で、脳を非常に活性化させるため、年を重ねても、元気で健康な生活が送れる秘訣になります。80歳で20本以上の歯が残せるよう、子供から年配の方まで年齢を問わず、口の中の健康に気を配っていただきたいと思っています」
日ごろのブラッシングと、2~3か月の定期検診で、虫歯と歯周病を予防
“口の中の健康”で、気をつけたいのは、細菌が口の中で食べかすから酸をつくり、その酸で歯が溶ける“虫歯”と、歯の周囲に付着した歯垢(しこう)が歯と歯肉のすき間に入り込み、歯を支えている骨を溶かしてしまう“歯周病”です。どちらも知らず知らずのうちに進行しますが、存外怖いのは、年配の方がかかると思われがちな歯周病です。実は20歳代の6~7割、30歳代の9割が罹患(りかん)していると聞いてドキリとしました。「歯周病の原因は細菌です。細菌は歯垢を温床にしています。予防するためには、歯や歯のまわりをきれいにすることが最も大切です」
歯周病と虫歯のどちらも、予防には日ごろのブラッシングが重要なのだとか。「7日のうち1日、歯科医院に来て口の中をきれいにしても、残り6日間口の中が汚れたままなら意味がありませんよね」。村上歯科医院では、口の中をきれいにするためにブラッシング指導にも力を注いでいます。村上歯科医院で用意している歯ブラシは、大きさだけでなくインプラント用などさまざまな形があるのでびっくりしました。
ちなみに、歯磨き粉のおすすめをたずねたところ「歯の汚れは柔らかくてネバッとしているんです。油汚れのお皿みたいなものでしょうか。いくら良い歯磨き粉を使っても、タワシなどで機械的にこすらないと汚れがとれないように、歯もきちんと機械的にブラッシングすることが大事なんです。口の中の点検や磨き残しがないか、2~3か月に1度は定期検診をされるといいですよ」。実際に村上歯科医院では気軽に定期検診に訪れる方が多いそうです。
歯がなくなると、野生動物は死んでしまう……、口の中の健康はそれほど大事
「歯は、一番最初の消化器です。口の中でよくかむことは、食物を細かくくだき、唾液(だえき)を分泌させて、消化を助けているんです。栄養の吸収にかかわる大事な器官です」。村上先生のやさしい口調に真剣さが増します。「野生動物は歯がなくなると死んでしまうんですよ。それくらい大事なんです。さいわい人間は口の中を、治療で保てますけれどもね」
村上先生は口の中の機能を正常に保ち、口の機能を回復させるために、歯の矯正やインプラント、入れ歯などの治療をしています。そして、口の中の機能が悪化しないように、日々のブラッシングや定期検診の重要性を、もっと知ってもらいたいと言います。
「8020運動で表彰される年配の方の元気な姿を見ていると、口の中の健康が、体の健康とどれだけかかわっているか、生活の質をどれだけ上げているか、心から実感させられます。日々のブラッシングをしっかり心がけることで、ただ長生きするのではなく、元気で健康に長生きをしてほしいですね」
終始気さくに語りかけてくれた村上先生。口の中だけというワクにとらわれず、全身のそして将来の“健康”まで考えて、口の中の健康を守りたいという信念が、優しさの根底に流れていることを強く感じました。
(取材年月:2009年11月)