ローコストで免震住宅・省エネ住宅を提供する一級建築士
ローコストで免震住宅を建てるには、予算をどう配分するかが決め手
「千利休の作とされる茶室“待庵”は、誰もが知る国宝として有名ですよね。でも、高価な素材でできているわけではないんですよ」。穏やかな口調で語るのは、近鉄河堀口駅から歩いてすぐのところにある岡田一級建築士事務所の所長 福味健治さん。質素な建材でありながら、何百年にもわたり価値を失わない千利休の茶室に感銘を受けて、「ローコストで安心感のある住宅を提供する」を建築士としてのポリシーに掲げています。
福味さんは、関西では数少ないIAU型免震設計資格者(免震装置開発メーカー「株式会社IAU」の認定を受けた技術者)の肩書きを持つ建築士。IAU型免震システムは、数個の鋼球の上に住宅を載せ、鋼球が転がることで振動エネルギーを吸収する構造となっていて、耐震、制震と並んで注目を浴びている工法です。構造上は大地震に強いと言われ、住む人に安心感を与える免震住宅ですが、コストの面で敬遠する施主が多いのだとか。しかし、福味さんは「工夫すれば、少ない予算でも免震住宅を建てることは可能」と、ローコストとの両立に自信をのぞかせます。「免震構造を住宅に取り入れるには免震装置や架台に700~800万円ほどかかると言われています。確かに高額ではありますが、予算が2000万円でも残りの1200~1300万円で外壁や内装などのほかの部分をまかなえば、免震住宅は建てられますよね。予算内で、高品質の住宅を建てられるかどうかが建築士の腕のみせどころです」
住宅造りにおいて、限られた予算をどの部分に投資すべきか。地震大国である日本で住宅を建てるなら、福味さんは住む人の命を守るための「免震構造」にもっと注目すべきだと訴えます。
震災時のボランティア経験がローコスト住宅の原点
1995年に起きた阪神・淡路大震災。福味さんは震災当日から神戸市に赴き、救援活動を行ったそうです。「被災した神戸の街には、望まずとも住宅を建てなければならない状況に陥ってしまった人たちがあふれました。その中には二重ローンに苦しむ人も。“今度は地震が来ても倒れない住宅を建てたい”と思っても予算を工面できない人たちを目の当たりにしたことで、今のスタイルが確固たるものとなりました」と福味さんは言います。
そのときの経験を生かして省エネ住宅にもローコストの手法を取り入れています。性能の違う断熱材を屋根や壁に使い分けたり、窓の位置や大きさを工夫することによって次世代省エネ基準もパスできる省エネ住宅のノウハウを確立できたそうです。
「安いだけの家とローコスト住宅は、発想が全く違う」。この思いは建築士としての企画力の面でも表れています。「予算内で住宅を完成させるには、既成の間取りにとらわれないことが大切です」。こう言って、福味さんは一つの例を挙げてくれました。「居間は家族が集まる空間ですので、どうしても散らかってしまいます。お子さんが学校から帰ってきたときやお風呂に入るとき、靴下や上着を脱ぎ捨ててしまうでしょ。居間が雑然とならないように、私は風呂場の脱衣室の横にグルーミングルーム(毛づくろいの部屋)を提案しました。そこですべての着替えを済ませるのです。お母さんにはとても喜ばれましたよ」
これまで自身が手がけた物件に対して「統一性がない」と少し照れながら話す福味さんですが、施主からは「センスがある」といった声をもらうことが多いのだとか。それは、福味さんが施主の理想に特化した住宅造りを実践していることにほかなりません。
住宅はオーダーメードが原則! いつまでもローコストで夢を実現させたい
子どもの頃から工作やプラモデルが大好きだったと話す福味さん。住宅造りへの熱意は冷めることはないようです。「これからのキーワードはエコロジー。環境に配慮することが、21世紀型住宅のあり方だと考えます。地域や周辺の環境の特性を生かして通風や眺望に気を配りながら、光熱費などを抑えるための環境配慮型の住まい造り。21世紀ではこれが求められるのではないかと思います」
「今も昔も住宅造りはオーダーメードが原則ではないでしょうか。住宅に暮らしを合わせるのでなく、“その人の暮らし方にはどのような住まいが似合うのか”の観点から住宅を一から造っていくべきです。ローコストで夢をかなえるお手伝いがしたい。全国の設計事務所がオーダーメードの住宅造りに貢献できることを知っていただきたいですね」
住宅造りを検討している人に向けて、自身のホームページなどでも情報を発信しています。「構造にお金をかけて、ローコストでも安心感のあるオーダーメード住宅を誰もが手に入れられるように」。住宅造りに関する福味さんの啓蒙(けいもう)活動はこれからも続きます。
(取材年月:2010年1月)