きれいに暮らすには、なぜ、かたづけられないかをその人に理解してもらうことが必要。でないと、リバウンドします
会社を辞めて東京へ勉強に。――極貧だけど他人と違うことが面白かった
梅田の繁華街を抜け、徒歩で約5分、マンション8階にインテリアデザイン事務所「WAVE FRONT(ウェエイブ フロント)」があります。経営者吉本とも子さんは、関西では数少ないフリーのインテリアコーディネーター&デザイナーとして、活躍しています。社名は「時代の波の先端に立ちたい」と、つけたと言います。
高校時代にインテリアデザイナーの道を志したそうですね。
「秋吉久美子さんがテレビドラマでインテリアデコレーター役をしていて、影響されました」と笑う。「両親が公務員でとても堅い家庭でした。なのに、私は事務の仕事が合わない。就職も短大推薦ではなく、自分で選びました」。最初に就職したのは、関西の照明器具メーカー。ライティングプランナーの仕事を覚え、照明器具のお話をしていると、自然と家具や間取りなどインテリア関連の相談にもお話が広がることも多くなりました。それで、2年後、東京のインテリアコーディネート専門学校に入学、23歳でした。
極貧の学生生活でした。学校は午前中、立ち食いソバで昼食をすませ、午後は秋葉原の照明器具メーカーのショールームに勤務、夜も週4日はバイトでした。「仕送りはいらないと、見えを切って出てきましたからね。アパートは、4畳半一間に北側の窓、トイレは共同、風呂はなし。2階は女性、1階は男性の学生ばかりでした」。みんな極貧ながらも、生き生きとした学生時代だったと振り返ります。
ひとつ忘れられない思い出が。新聞勧誘にきた男性が、宿題の図面を描いている吉本さんを見て、「描きにくいやろ。少し待って」と。間もなく車に製図台を積んで運んできてくれました。大学の設計科を卒業するので不用になったらしい。その製図台は大切にして、今も事務所に置いています。
お客様が笑顔になる、くつろげる生活空間を目指しています
大阪で独立したのが26歳でした。主要な仕事は、マンションや戸建てモデルルームのプランから設営までをトータルにコーディネートすることです。間取りやカラースキーム、インテリアや照明、小物の配置まで手がけます。こんな事例がすでに400件を超えました。
「モデルハウスを手がけると共に個人のインテリアの提案もしてきました。『住まいは人が造るが、その空間が人を創る』という思いでお客様が笑顔になる、くつろげる生活空間を目指しています」
色彩の勉強をいろいろされたそうですね。
「少し前までは、色彩の提案を事業担当者と練ってプレゼンテーションをしてもその上司から自分の好みではないからと再提案を求められることもありました。 悔しくて、専門的な知識の裏付けが必要だと思い、カラーセラピー関係、パーソナルカラーなど様々な色彩の勉強をしました。資格試験も受けてかなりの“投資”もしましたよ。それから、関西の色彩感覚は特徴がありますね。ただ派手で奇抜な色彩とお客様の心に残る印象的な色彩は違います。どんな人に住んでもらいたいのか、どう感じてもらいたいのかを感覚的にアピールできるのがカラープランニングです。住宅に限らず、公共の場所や病院等でも配色は重要です。<五感で感じる色彩>を大切にしています」。
吉本さんは「色彩が語る言葉を伝えたい」が信条だそうです。数多い資格の中でも、「カラーコーディネーター」「パーソナルカラーアアドバイザー」「センセーションカラーセラピー」と、色彩関係が飛び抜けています。
きれいに暮らせないのは、価値観が整理できていないから
2009年夏に、マスターライフオーガナイザーと整理収納アドバイザー1級の資格を取って、整理収納コンサルティングの世界にも足を踏み入れました。この世界も、空間のコーディネートやプロデュースにつながると判断したからです。
きっかけは、何だったのでしょうか。
「母と妹が、かたづけられない人だったからです」。これが最初の動機とか。さらに、コーディネートしたモデルルームをそのままの形で販売した後、その部屋を訪れると、ダンボールが山積みのまま乱雑になっているのを見て頭を抱えました。「もっときれいに暮らせる部屋なのに・・・」
だから、「きれいに暮らせる生活提案をしよう」。これも動機になりました。
きれいに暮すコツは?
「価値観ですね」。自分にとって本当に必要な物なのか。という判断があいまいだからと指摘します。「なぜ、かたづけられないかをその人に理解してもらうことが必要。でないと、リバウンドします」。かたづけられないタイプは、「几帳面で、真面目なタイプ」が多いという。そんな人には、なぜ、かたづけられないのかを聞きながらアドバイスをし、きれいに暮す方法をお伝えします。福祉住環境コーディネーター、福祉用具専門相談員の資格も持っており、高齢化社会をひかえて「シニア世代で整理収納をしたい」「家族に介護が必要な方がいらっしゃる」こんなケースにも力を注いでいきたいそうです。
(取材年月:2010年1月)